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2016年09月16日


撤退シナリオ

シンガポール進出に関するガイド本はたくさん出ていますが、どのようにして撤退するか、という話はほとんど載っていません。中国などと比べると撤退は容易であると考えられているためと思われますが、いざ撤退するとなると情報が不十分でどうしていいかわからない、という方も多いのではないかと思います。詳細な手続きに関する説明は弁護士の方にお任せするとして、一般常識レベルの撤退ノウハウをまとめてみました。(文責:田野)

1.Striking Off(登記抹消)

一番シンプルでお金がかからない方法は、税金と労働債権を含むすべての債務を支払い、債権を回収した後に登記抹消(Striking-off)する方法です。債権債務がゼロになった財務諸表を作成して、解散を決議した株主総会の議事録などを添付して、BizfileのサイトからStriking-offの登記を申請します。

しかし、実際のケースでは、事務所や店舗の契約期間が残っていたり、親会社からの借入金が残っている一方で、契約期間満期までの家賃などをすべて支払うだけの資金がなく、債権債務をゼロにすることが困難な場合が一般的です。このような場合には、それぞれの債権者と交渉して、債務を減免してもらうことが必要になります。

一般的な賃貸契約書では、期日前終了についての条項がなく、期日前終了は契約書上は契約違反として損害賠償の対象となります。満期までの家賃に加えて、弁護士費用などの諸経費も含めて請求されても文句を言えない形になっています。しかし、実務的には次のテナントが決まれば、契約満期までの現在の家賃との差額(新しいテナントの家賃が現在の家賃より低い場合)と不動産仲介業者の手数料などを支払うことにより、期日前終了に同意してくれる大家さんがほとんどです。従って、契約満期までどれくらいの期間が残っているかによりますが、新しいテナントを探してくることにより、借家契約上の債務を圧縮することが可能になります。

親会社以外の債権者との話がすべてついて弁済が完了したら、最後に親会社の債務減免(または債務の資本への振替)を受けて、債権債務がすべてなくなるようにします。また、歳入庁(税務署)から未払税金がないことの証明書を取得するなどの手続きが必要で、最終的にすべての債権債務がない状態とACRAに認めてもらえる状態にするまでには、数カ月単位で時間がかかります。

なお、PICの助成金を現金で受け取っている場合には、購入してから1年経っていない資産にかかる助成金を歳入庁に返金する必要がありますので、注意が必要です。

 

2.Creditors’ Voluntary Liquidation(債権者主導の任意整理)

しかし、複数の店舗を借りている場合などには、後継テナントがなかなか見つからず、契約の期日前終了ができない場合も想定されます。つまり債権債務をゼロにすることが困難であると想定される場合です。そのような場合には、すべての債権者と一括して債務減免の合意をするCreditors’ Voluntary Liquidation(債権者主導の任意整理)手続きに移行します。

まず会社で債権者集会を招集します。債権者集会では清算人(Liquidator)を選任します。清算人には会社で選定した人が選ばれることが多いので、事前に清算手続きに慣れた会計士などに依頼しておくことが一般的です。この清算人の費用は会社に残っている資産から優先して支払われることになっていますので、報酬を別途に用意する必要はありません。

債権者集会を招集するときには、その日時・場所などを日刊新聞に公告する必要があります。

 

すべての債権者が参加して債務減免に合意できた場合には、Liquidatorが清算登記を行って、会社の清算が完了します。なお、この場合も租税債務については減免を受けることができませんので、注意が必要です。

一般的には1年間程度を要するといわれています。

 

3.Compulsory Winding-up(裁判所が関与する強制的な清算)

債権者集会で合意に至らない場合には、会社、株主、債権者は裁判所に、破産手続きの開始を申し立てることができます。実際にはこの手続きにはVoluntary Liquidationと比較すると倍以上のコストがかかるので、よほど多額の債務と会社の資産があり、不公平な形で分配しようとしている場合などでなければ間尺に合わないため、実際に利用されるケースはまれです。

つまり、逆に言えば、ほとんどのケースで債権者集会での合意が成立して、Voluntary Liquidationで決着します。

 

4.Members’ Voluntary Liquidation(株主主導の任意清算)

多くの日本企業の現地法人が採用している方法ですが、Creditors’ Voluntary Liquidationと比較すると、次のような特徴があります。

  • 最初にDirectorがSolvency Declaration(債務の弁済はちゃんとできますよという趣旨の宣誓)を行い、それをACRAに登記するところから始めます。
  • その後は、Striking-Offの項で述べたように、債権債務をゼロにすべく債権回収と債務弁済を行います。
  • その結果、債務を弁済しきれなかった場合には、Creditors’ Voluntary Liquidationと同様に債権者集会を開催して、債権者に債務減免をお願いすることになりますが、実際には親会社が代わりにすべてを弁済する結果になることが多いようです。

 

5.費用と期間

Striking-Offが一番安く上がります。一般的には5,000ドル以下といわれています。期間は半年から1年。

Creditors’ Voluntary LiquidationとMembers’ Voluntary Liquidationは1万ドル~2万ドルといわれています。期間は約1年。

Compulsory Winding-upは5万ドル以上といわれています。支払うのは申立人です。

 

当社では、撤退を検討されている方のご相談に乗っています。

必要に応じて法律事務所、会計事務所のご紹介をいたします。

お気軽にご相談ください。

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